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離さない手のひら 俺とネイミーの間には、どうしても消えない差が在る。 男性と女性という性別、生まれ持っての外見、今までの生活の中で培ってきた性格。 違って当たり前の事だが、その違いがどうしても消えない差を生み出す。 俺は男で、地味な髪色に平凡な顔立ちで、外交的な性格で。 ネイミーは女で、派手な髪色に特出してはいないけれど整った顔立ちで、内向的な性格で。 その上、あいつは誰彼構わず優しく出来る広い心の持ち主で、俺はそんな事出来ねぇ心の狭い奴だ。 だから余計に、その差を強く感じるんだ。 例えるならば、それは階段。 壁のように、圧倒的な存在感で俺とあいつを遮るようなものじゃなく。 溝のように、確かな線を引いて俺とあいつを分かつようなものじゃなく。 坂のように、曖昧な高低で俺とあいつを離れさせるようなものじゃなく。 圧倒される程でもないが確かに存在する、 曖昧ではなくはっきりと感じることも出来ない差。 例えるならば、それはいくつかの階段。 ……俺とネイミーの間には。 目には見えない、けして消えない、階段が在る。 どうしてもあいつは、その階段に躓いちまう。 俺もそれに気付けずに、あいつを置いてっちまう。 気付いた時にはあいつはもう隣にいなくて。 振り向いて、いくつかの段を下りて、手のひらを差し出すと。 あいつは必ず俺の手を取る。 その手を引いて、見えない階段を、消えない階段を昇り切って…… そうして今まで、やって来れたけども。 もう潮時なのかもしれない。 ……俺は、この手を離した方がいいんじゃねえだろうか。 分かってる。 俺がその手を引くから、あいつが無理をしていること。 俺がこの手を離さないから、あいつが苦しんでいること。 あいつにとって、俺の歩くペースは早過ぎるんだろう。 時折、本当に稀にあいつが、小さく溜息を漏らしていること。 苦しさを、辛さを押し堪えるように、瞳に涙をためていること。 知ってるんだ。 でも、放っておけねぇ。 一人にしておいたら、あいつはきっと泣くから。 置いてったら、あいつはきっと泣くから。 でも、それでも。 放っておけなくても。 俺が手を引いている限り、あいつは無理をし続け、苦しみ続けるだろうから。 一一俺は、この手を離した方がいいんじゃねえだろうか。 ひゅっ、と。 視界の左脇を掠めた矢。 それは、あいつの一撃を受けていた魔物の放ったもの……そう認識しただけで咄嗟に動く、身体。 ばっ、と。 飛び越した震える躯。 その影の持ち主は、俺が対峙していた魔物の息を止めるのを、ただ呆然と眺めていた。 「何やってんだ。戦場で気ぃ抜くなよ」 「うん……ごめんね……」 情けなく尻餅をついているあいつは、まだ細かく震えてた。 俺はそれを見て、あいつに手を差し伸べた。 その瞬間俺は、自分にどうしようもなく呆れた。 また、だ。 また、俺は、あいつに無理をさせようとしてる。 その瞬間俺は、自己嫌悪に襲われた。 自分の気持ちに気付いて。 違うんだ。 放っとけないからじゃなくて、あいつが泣くからじゃなくて、 俺が離せないだけなんだ。 あいつの手のひらを。 あいつの存在を。 俺が手放せねぇだけなんだ。 ネイミーの隣にいたい。 あの階段を越えなければならなくても、 その為にネイミーに無理をさせなければいけなくても、 俺は、ネイミーの隣にいたい。 そう、思ってる。 そんな事を、思ってる。 そんなワガママなことを、俺は思ってる。 なんて奴だろう、俺は。 無理をさせることしか出来ないのに、苦しめることしか出来ないのに、 それでも一緒にいたいと思ってる。 そうして手を離せずにいる。 俺が差し伸べた手のひらに、あいつは身を委ねて。 ぐいと引っ張る俺の力に、逆らうこともせず。 立ち上がった。 そしてあいつは、俺の瞳を見据えると、こう言った。 「コーマ……、私、頑張るから。 コーマに、迷惑かけないように…追いつけるように…、頑張る、から…… だから……待っていて、くれる? コーマの隣に…いたいの。 コーマと…他の誰でもない、コーマと一緒に…行きたいの」 驚いた。 嬉しかった。 あいつが階段のようなあの差を感じているかなんて知らないし、 知る方法もねえけど。 それでも嬉しかった。 あいつは無理をしているはずなのに、 苦しんでいるはずなのに、 それでも。 それでも、俺と一緒にいたいと、思ってもらえたことが。 嬉しかった。 「……ああ。 待ってるぜ」 嬉しかった。 手を離さずにいてと、言われたような気がした。 この身勝手な想いを、赦してもらえたような気がした。 この身勝手な想いを、受け止めてもらえたような気がした。 嬉しくて堪らなかった。 待っていてやるよ。 お前が俺に追い付くその日を。 お前が無理しなくても俺といられるようになる時を。 お前が苦しまなくても俺といられるようになる時を。 ……その為にも少しは、 俺とお前のペースが合うように、 お前のゆっくりペースに少しだけでも近付けるように、俺も努力するさ。 それまでは、…それからも。 この手を離さないで、いいよな? 一緒に、隣を、歩いて行きたいんだ。 ![]() コマネイ、甘々…というより、淡甘、という感じでしょうか。 コマネイ好きなのですが、…二人の性格、口調がイマイチ掴めません(こらっ) 偽者くさくて申し訳ないです……うふふ(笑って誤魔化す体制に入りましたな) ちょっと展開が急…ですがそれは作者も思っていることなので気になさらないでください(笑/誤魔化し体制続行中) コーマの口調、…やっぱりなんだか違和感感じますがどうかお見逃しください… ネイミー視点もあったりなんかするので、お時間ありましたらそちらもお読みになって頂けると幸いですv まだまだ書きたいCPやコンビあるので創作熱はきっと収まることを知りません。 特に短編(長編は思い付かんとです) |